ディスプレイ

17.7.1. ディスプレイ

コンピュータの映像出力装置として最も基本的なディスプレイとプロジェクタ、そしてそれらを繋ぐための規格について説明します。

ディスプレイ #

ディスプレイはコンピュータから送られてくる映像を表示する装置で、コンピュータを使う我々人間にとって最も大事な装置です。そこでまず、ディスプレイの性能の指標について説明をしておきます。

方式 #

昔はディスプレイと言えば CRT 方式のものを指しました。CRT 方式ではディスプレイの裏側に蛍光塗料を予め塗っておき、それを電子銃で叩いて発光させることによって画面を表示していました。CRT 方式は技術が比較的原始的だったため最初に実現しましたが、現在から振り返ると、電子銃を飛ばすために奥行きのスペースが大きくなるという不都合がありました。

一方、現在の主流となっているのは液晶ディスプレイです。実現する技術はいくつかありますが、いずれも二枚のガラス板の間に薄い物質を挟み、それに電圧をかけることで画面を実現しています。そのため液晶方式では CRT 方式と違って奥行きを必要とせず、スペースを節約できます。ノートパソコンで液晶を使うのはもちろんですが、デスクトップパソコンの場合でも省スペース化が利点となり、ほとんどの CRT ディスプレイに取って代わるようになりました。

なお、テレビを連想すると「プラズマディスプレイ」が用いられても良さそうな気がしますが、プラズマディスプレイは発熱量が多いという弱点があります。そのためコンピュータ専用のディスプレイでプラズマ方式が採用されることはありません。

解像度 #

ディスプレイ上には文字や絵をはじめとする様々なものが表示されますが、それらは全て小さい光の点 (ピクセル) を集めることで実現されています。そこで、画面を表示するのに用いられるピクセルの総数を解像度と言います。通常ピクセルは長方形の格子上に配置されるので、横 1024 × 縦 768 のように、横と縦のピクセル数を並べて表示します。

画質を決定するのは単位面積あたりの画素数ですので、同じ解像度であれば小さいディスプレイの方が画質が良く、また同じ大きさのディスプレイなら画素数が大きい方が細やかな表示ができます。したがって、ディスプレイの性能を計る指標として表示できる解像度を使うことができます。2013 年現在、大きさが 20 インチ前後のディスプレイではフル HD と呼ばれる 1920 × 1080 の解像度を表示できるものがほとんどです。

応答速度 #

応答速度とは、コンピュータから「この部分にこの色の光を出力してください」という指示が送られてきてから実際にその色がディスプレイに表示されるまでの時間間隔を指します。ほとんどの液晶ディスプレイは応答速度が 20ms (ミリ秒) 以下の範囲にあるようです。

あまり応答速度が遅いと、動画を見るときに見栄えが悪くなる可能性があります。たとえばフル HD の場合は 1 秒間に 59.97 回の画像の書き換えが行われるため、応答速度が 20ms だとたとえば映像が音声に比べて 1 コマ遅くなるということが起きえます。もっとも、その差を人間が感知できることは希です。

ちなみに、CRT ディスプレイは液晶ディスプレイに比べて応答速度が早い傾向にあります。今でこそ液晶ディスプレイの応答速度は速くなりましたが、液晶ディスプレイが登場したての頃は決して応答速度が速くなかったので、ゲーム用途に敢えて CRT ディスプレイが使われていたこともありました。

タッチパネル #

スマートフォンやタブレットデバイスの普及に伴い、出力装置であるディスプレイ自体が入力装置を兼ねることが多くなってきました。また Windows 8 は旧来の Windows とは違う Modern UI と呼ばれるインターフェースを搭載し、タッチパネルと合わせた利用を強く意識した作りになっています。そのため、Windows 8 を搭載するノートパソコンの多くはタッチパネルを搭載し、デスクトップ用の液晶ディスプレイにもタッチパネルに対応するものが出てきています。

しかし当然ながら、タッチパネル搭載製品の方が非搭載製品よりも値段が高くなります。しかも Windows 8 の機能をフルに使うには 10 点同時タッチができることが求められ、それに対応する製品は安くても 4 万円は下らないでしょう。タッチパネルディスプレイが定着するかどうかの予測は難しいというのが現状です。

プロジェクタ #

プロジェクタはディスプレイと違い、入力された映像信号を外部のスクリーンに投影するための装置です。大勢の人で同時に画面を見るために用いられるので大きい画面を表示できるようになっており、80 型や 100 型のサイズで映像を表示することができます。学校の授業で使われることも良くありますね。

プロジェクタの場合も、表示可能な解像度が性能を表す基準の一つになります。しかしプロジェクタの場合、それ以外に「投影可能距離」という重要な性能指標があります。プロジェクタはレンズを通して画面を出力するため、出力の際はレンズを調整してスクリーン上にピントを合わせなければいけません。しかしピントを合わせられる距離には上限と下限があるので、その範囲にプロジェクタを置かないと画面をちゃんと見ることができません。この距離を「投影可能距離」と言います。通常、プロジェクタのカタログには 80 型あるいは 100 型の場合での投影可能距離が記されています。

映像インターフェースの規格 #

コンピュータとディスプレイを接続する規格を紹介します。

VGA: 2013 年現在広く用いられている規格の中で最も古いものです。端子は 15 本のピンが 3 列に並んでいます。

VGA は下に挙げる規格とは違い、信号をアナログ方式で転送しています。これは CRT ディスプレイの普及していた時代に用いられていたためです。そのため CRT 方式とは相性が良いものの、ノイズの影響を受けやすいという欠点があります。

DVI: DVI (Digital Visual Interface) はデジタル方式で信号を転送する規格の中で最も古いものです。液晶ディスプレイなどはデジタル方式でデータを処理するため、VGA によるアナログ方式のデータ通信と相性が悪いという問題がありました。そこで VGA に取って代わることを目指し、DVI 方式が策定されました。2013 年現在で最も普及している規格です。

HDMI: HDMI (High-Definition Multimedia Interface) 規格は DVI の後続となる、映像と音声を転送するための規格です。そもそもは DVI を拡張したデジタル家電向けの規格だったたのですが、最近ではコンピュータがデジタル家電としての機能 (Blu-ray disc の再生やテレビの視聴など) を持つようになったこともあり、狭義の「家電」の範疇には入らないコンピュータやディスプレイが HDMI 端子を搭載することも多くなりました。

DisplayPort: DisplayPort 規格も HDMI 同様 DVI の後継を意図して策定された、比較的新しい規格です。こちらは純粋にコンピュータ用として開発された経緯があり、音声の転送に使える場合もありますが、もっぱら映像の転送のみに用いられています。

DisplayPort には普通の大きさのコネクタと mini DisplayPort コネクタの 2 種類があります。mini DisplayPort が最もよく用いられているのはおそらく Apple 社の製品で、MacBook シリーズは全て mini DisplayPort を採用しています。

このように、2013 年現在では 4 種類もの規格が併用して用いられる状況が続いています。そして新しいコンピュータでは HDMI や DisplayPort が用いられる一方、古いディスプレイやプロジェクタでは VGA 端子や DVI 端子しか使えないこともあります。そのため映像主力デバイスを使う際は、予め変換コネクタが必要かどうかチェックしておくと良いでしょう。

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