SNS やスマートフォンの使い方

20.3.4. SNS やスマートフォンの使い方

SNS やスマートフォンを使う上で、個人情報に関するトラブルや「炎上」と称される事故から身を守る方法を考えましょう。

ここ最近、インターネットを経由したコミュニケーションを取るための SNS (Social Networking Sevice) と呼ばれるサービスが、スマートフォンと連携して目覚ましい発展を遂げています。日本でもたとえば、Facebook, Twitter, LINE, mixi, Instagram といったサービスが有名です。こうしたサービスは元々は個人が使うものでしたが、今では色々な企業や団体が使うようになりました。東京大学もその例に漏れず、大学公式の

Facebook による広報ページ

広報用 Twitter アカウント が運用されています。また全学的なものでなくても、

駒場図書館の Twitter アカウント など、東京大学内の色々な組織が SNS を用いた情報発信を行っています。そしてテレビ、新聞や雑誌といった既存のマスメディアも、双方向の情報のやり取りをするために Twitter を使うことがしばしばあります。

SNS の特徴はサービスによって色々違うものの、それに参加する人同士のコミュニケーションを促す点は共通しています。特にインターネットを経由するため、SNS を使えば遠く離れたところにいる知り合いや、あるいは出会ったことのない人とでさえもコミュニケーションができます。このような機能は、現代ならではのものと言えるでしょう。

一方、こうした SNS が問題を引き起こすこともあります。まず SNS の利用者増加に伴って問題になったのが、個人情報の扱い方です。SNS には多くの人が個人情報を登録するため、犯罪のターゲットになります。また SNS では他の人があなたの個人情報を見られるようになるため、不用意な使い方をするとプライバシーが侵害されてしまう恐れがあります。これが第一に気を付けるべき点です。

加えて SNS には、しばしば他人の書き込んだ文章や写真を拡散するための機能が備わっています。そして特別な設定を施さない限り、SNS に投稿された内容は世界中の(少なくとも、同じ SNS のアカウントを持っている)人が見ることができます。そのため時と場合によっては、自分の投稿が高速かつ広範囲に拡散され、情報のコントロールが効かなくなることがあるのです。これは大変恐ろしいことです。また SNS では遠隔でのコミュニケーションを行うため、相手の表情などを見ることができません。このことが、しばしばコミュニケーションに障害をきたします。

この節では、SNS のそうした負の側面に焦点を当てて考察をします。一度「どのように SNS を使うか、SNS でトラブルを防ぐにはどうすればよいか」を考えてみましょう。

自分の個人情報の守り方 #

みなさんは SNS サービスを利用するとき、自分の情報が誰から見えているかを意識したことはありますか?たとえば、もしあなたが Facebook を使っていて情報公開に関する設定をした覚えがなければ、Google で自分の名前を入れて検索してみると良いでしょう。検索結果にあなたの Facebook ページが出るかもしれません。

インターネット上にある情報は基本的にオープンなので、特別な設定をしない限り、世界中の誰もが見られると思わなければいけません。意図して自分の情報を出すことには何ら問題ありませんが、もし何も意図せずに SNS の情報を全世界に向けて公開していたら、すぐに自分の設定を見て「この情報を公開して良いかどうか」と考えてみるべきです。

たとえば SNS であなたのメールアドレスが公開されていたとしましょう。そうすると、ある日誰か悪い人があなたのメールアドレスを見つけ、広告メールを送りつけたりするかもしれません。あるいは、あなたが自宅の電話番号を公開しており、さらに SNS でお母さんとやりとりをしていたとしましょう。そうすれと、誰か悪い人があなたの自宅にオレオレ詐欺を仕掛けるかもしれません。SNS の情報があればあなたがお母さんを呼ぶときの愛称、あなたの職業その他諸々が分かっているので、詐欺の成功率は格段に上がるでしょう。

このように、個人情報が誰からも見えるということは極めて恐ろしいことなのです。最近では詐欺などをする犯罪集団も高度に組織化されており、手に入る情報を的確に用いて攻撃を仕掛けてきます。また SNS は利用人数が多いですから、一人一人の発信するささいな個人情報であっても、寄せ集めによって深い情報を得られてしまう場合もあります。不用意に個人情報を晒すことのないように、注意しましょう。SNS の利用は決して悪いことではありませんが、どの情報をどの範囲まで公開するかは、必ず 1 度は考えるべきことです。設定を見直してみましょう。そうすれば少なくとも、犯罪に巻き込まれるリスクが下がると同時に、あなたの友達が悪気無しにあなたのプライバシーを侵害してしまうのを避けられるはずです。

SNS 以外のスマートフォンのアプリも、プライバシーに大きく関係しています。スマホはカメラや GPS といった色々な機能も内包しているため、プライバシーに関わる情報がたくさん入っており、管理に注意が要るのです。たとえばスマートフォンの GPS 機能を地図アプリと組み合わせると「散歩の経路を地図上で表示すること」などが可能になります。これは非常に便利ですね。また、スマートフォンなら撮影した写真をワンタッチで SNS に共有することもできます。日頃から SNS を使う人にとっては、これも便利な機能の一つでしょう。ところが、こうした情報が意図せずに他人と共有されていたら、どうでしょうか。少なくとも、こういう非常にプライベートな情報を「世界中全ての人に隅から隅まで見せびらかしたい」と思う人はいないでしょう。でもアプリケーションの設定次第では、そういう結果になりかねないのです。

先ほどの SNS に関する話の繰り返しになりますが、スマートフォンのアプリケーションがどのように情報を共有するか必ずチェックをし、自分が理想とする設定を行うようにしてください。特に最近のアプリケーションでは、SNS と連携したり自動でクラウドサービスに共有されるものが増えています。こうしたアプリケーションは要注意です。特にスマホは、撮影した写真に自動で位置情報を付け加えることがあります。位置情報が入っていることに気づかず写真をインターネットに流してしまうと、自宅の位置を全世界に向かって教える結果となります。くれぐれもカメラの設定には気を付けてください。

顔の見えないコミュニケーションをするときの注意 #

文字を使ったコミュニケーションでは、相手の顔が見えません。直接会話するのに比べて意図を汲み取りにくいので、気を付けましょう。

たとえば極端な例として「死ね」という言葉を考えてみましょう。普通「死ね」という言葉は、ネガティブな意味に使われます。見ず知らずの人にいきなり「死ね」などと言ったら大問題になるでしょう。一方で気心知れた親友の間柄で「死ね」と言っていたら、その意味はどうでしょうか?もしかしたら、お互いに心の内を理解した上で悪ふざけをしているのかもしれません。またネットスラング的な用法では、「死ね」という言葉がほめ言葉的に使われる場合すらあります。このように、言葉は文脈によって大いに意味を変えることがあるのです。

しかしインターネット越しの SNS では、文字の情報だけが独り歩きてしまいます。そして見ず知らずの人とコミュニケーションするとき、相手が何を考えていたかを正確に知るのは困難です。ですから不用意な言葉遣いをすると、意図せずに相手を傷つけてしまうことがあるのです。また、あなたの発言を見た第三者に誤解されてしまう恐れもあります。そうすると最悪の場合、炎上案件に繋がってしまうこともあるでしょう。くれぐれも注意してください。

昔から「文字だけではコミュニケーションが取り辛い」と思っている人は多く、そうした欠点を補おうという動きは色々ありました。古いものではたとえば、いわゆる「ガラケー」の絵文字機能や、( ´∀`)オマエモナー などに代表される顔文字やアスキーアートなどが使われてきました。新しいものでは LINE スタンプがポピュラーでしょう。そして最近の SNS では写真、音声や動画を手軽に使えるようになってきました。そのおかげで、かつてよりは感情を込めたコミュニケーションがしやすくなってきてはいます。ですが文字の占める割合が多いこと、そして相手の顔がリアルタイムで見辛いことは、相変わらず変わりません。こうした SNS の特性を、心の片隅に留めておいてください。

炎上を防ぐために #

最後に、SNS を使う上で気を付けるべき炎上と呼ばれる現象を紹介します。炎上は、上で述べた「個人情報」や「コミュニケーション」の問題も複雑に絡み合う、厄介な問題です。

狭義の炎上 #

「炎上」という言葉が指す内容は一定ではないのですが、狭義には「社会通念上望ましくないとされる行為を行った事実が不特定多数の人に晒され、その結果として多大な注目を集めてしまう」という現象を指します。規模が大きいものはマスコミにも取り上げられるので、たとえば試験におけるカンニングのような不正行為や、あるいは未成年者の飲酒・喫煙といった不法行為を SNS に書き込んだ人が炎上する事案を皆さんも見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

ひとたび炎上が起きると、単なる処罰の次元を超えて、問題のある行為を書き込んだ人の尊厳が踏みにじられることがあります。もちろん、法律に触れるような行為はやってはいけないことです。しかし一方で法律を犯した人が、全く見ず知らずの人から攻撃を受けたり、あるいは不当にプライバシーを暴かれたりしていい理由はありません。ですが残念ながら、炎上事案では往々にして、情報発信をしてしまった人が過度な攻撃を受ける傾向にあります。また炎上の場面では、面白半分に渦中の人を叩く人がいることも事実です。

そして恐ろしいのは、実際の行為とは関係なく、不適切に「見える」行為があるだけで炎上に発展し得るという点です。たとえば、こんな場面を想像してみてください。ある学生が友達をお酒を飲みながら、楽しくレーシングゲームをやっていたとします。そのとき酔いが回って、ゲーム内での出来事を指して「飲酒運転なう」と Twitter に呟いたら、どうなるでしょうか?

Twitter では「動詞 + なう」によって、「今~している」という意味を表すことがあります。また Twitter に限らず、日本語におけるオンラインコミュニケーションでは、笑っていることを表現するために「w」という文字が用いられることがしばしばあります。

この学生が行っている行為そのものには、(満年齢が 20 歳に達している限り)全く問題がありません。「飲酒運転」が指すのは、あくまで「お酒を飲みながら、レーシングゲームでカートを運転している」という事実だけです。ところがもし、上にある**つぶやきが文脈から切り離され、単独で拡散されたらどうなるでしょうか?**あなたと近しい人は、この一連の発言を何とも思わないでしょう。ですがあなたと全く無関係な人が偶然「飲酒運転」のつぶやきだけを目にしてしまったら、その人は事実関係の確認をすることなく、拡散に走ってしまうかもしれません。そうした行為の積み重ねで、炎上が起きてしまうのです。

このような状況を分析すると、まず自分の発信する情報は断片化されうるという問題点が浮かび上がります。またインパクトの強い情報は、真偽とは無関係に広まってしまうという事実も重要です。ですから SNS で情報発信するにあたっては、単に内容の良し悪しだけでなく「切り取り方によっては、マズいことをしているように見えないか?」まで考える必要があるのです。気を付けましょう。**炎上してからでは手遅れです。**また、炎上している本人は平気だったとしても、炎上すると所属組織等に飛び火することがあります。そうすると、実際の行為に問題がなくても「発言の仕方に気を付けるように」とお叱りを受けることになるかもしれません。

広義の炎上 #

さて「炎上」という言葉は、もう少し緩い意味で用いられこともあります。たとえば世論を二分するような社会問題があったとしましょう。このとき一方を支持するような過激な意見を主張すると、その主張が意見に同意する人、反対する人双方の間で主張の内容が急激に広まることがあります。このような場合にも「炎上した」と言われることがあります。こういう「意見の主張に起因する炎上」の場合、主張が注目を集めるのは良いことと言えるかもしれません。しかし一方で、SNS では見ず知らずの相手と言葉だけでコミュニケーションを取りますから、発言が不必要に攻撃的になってしまうことがあります。対立する意見を相手とする場合、なおさらそのような傾向が強まるでしょう。意見を主張した人に理不尽な言葉が浴びせられることが多いという点では、このような炎上も望ましくないと言えます。

もちろん、こうした注意事項があるからといって、皆さんが自分の主張を述べるのをやめる必要はありません。皆さんには言論の自由がありますから、法に触れるなどしない限り言いたいことを言う権利がありますし、無闇な自粛をする必要もありません。ですが、いつでも「その発言が何を引き起こすか」だけは一度考えた方がよいでしょう。インターネット上で強い主張をするときは、それに相応して、批判を受け止める覚悟が必要です。

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